漫画版無敵超人ザンボット3


 放送当時唯一のコミカライズである冒険王版ザンボット3がマンガショップ様より発売されました。サンライズロボット漫画コレクションというコミカライズファンを歓喜させる企画ありがとうございます。これを機にトライダーやザブングル辺りや、冒険王以外(ボンボン版ドラグナーとか)なども復刻してくれたらありがたいなぁと思いますが、まずは発売した事を喜びましょう。
 正直ダグラム&ボトムズはページ数が少なすぎる事と、同期にボリュームのあるボンボン版があった事で微妙な感じ(ページ数がページ数なので仕方ない。岡崎先生のせいにしてはいけない)で運がなかった感じですが、ザンボットからガンダムまでは唯一のコミカライズとしてページ数も十分与えられています。

 そのザンボット3を執筆したのは冒険王でジェッターマルスやレッドタイガーを連載した岩田廉太郎先生。レッドタイガーとジェッターマルスは当時の冒険王とコミック文庫でちょっと目にした事がありますが、時系列的にザンボット3が画風の変化が著しい時期だと感じさせます。ジェッターマルスの頃のシャープな絵柄がザンボット3の1話で、レッドタイガーのなんともいえない絵柄は2話以降って感じです。印刷の関係で一部絵がつぶれている事もありますが、正直第1話の絵柄のまま進んだらよかったなぁと思ってみたり。第1話の勝平は原作より大人っぽく今見ても結構カッコイイ感じです。

 絵についてはさておき、ストーリーでは岩田先生なりのアレンジが加えられています。最も原作が原作だったのでブレーキを踏みこんでしまった事を悔む人もいるかもしれませんが、良くも悪くも原作のコピーになるよりは、限られたページの中でどのように話の辻褄を合せる等のオリジナリティーあってこそのコミカライズと私は考えています。最も桜多先生辺りにザンボット3をやらせたら原作に並ぶトンデモ作品になった可能性もありますが、過ぎた事を言っても仕方ないのでスルーしましょう。ただ独自の解釈はコミカライズならではと岩田先生を誉めておきます。

 ※予備知識
・源五郎父さんまさかの欠席。きいろ、公子も出ません。神北、神江家の両親は岩田先生のオリジナルデザイン。和行もオリジナルですが、マスコットキャラとしてそれなりに定着しています。
・キング・ビアルの出番なし。終始ビアル1号だけなので宇宙へ出撃しない。
・ガイゾック、ギッザー、ブッサーの出番なし

  漫画版ザンボット3 第1話ザンボ・エース登場
※サブタイトルはあくまで名無しのイメージです。
大まかに原作の第1話をコミカライズした手堅い第1話です。原版の状態が今回だけよろしいのか、それとも岩田先生の作風が変わってしまったのか。第1話と第2話以降で絵の質に圧倒的な差があります。この表紙の勝平が原作より大人びた感じでして、正直アニメ版より好きでした。
 ですが、第2話から頭身が縮んでしまい、別冊付録(※当時の冒険王では人気のある作品は別冊付録という形で頁が多くもらえた。ザンボット3は初回以外別冊付録の形式だったので冒険王の読者からの人気は高かったと思われる)のミニコミックを原稿にしている為か絵がところどころ潰れてしまい、ひょっとしたら読破するには少し苦痛かもしれません。原稿がちゃんと残っていたなら……。
 
   漫画版ザンボット3 第2話合体ザンボット3

※サブタイトルはあくまで名無しのイメージです。

 
原作の第3,4話をミックスした感じのエピソード。冒頭のビアル星人についてから香月の糾弾までは第4話を、ザンブル、ザンベース到着でザンボット3合体の下りは第3話っぽいという感じでしょうか。ページの都合もあり勝平が独断プレーすることなくすんなり合体しています。
 そして、左のコマから分かる通り原作でははぐれただけだった香月の両親が、漫画版ではまさかの死亡。両親を本当に失ってしまったら香月の次回へ続く怒りも最もな気がします。
 
  漫画版ザンボット3 第3話さらば!わが友よ
※サブタイトルはあくまで名無しのイメージです。

 
原作の7,16話を合わせた展開でしょうか。戦いによる津波で街が飲み込まれる描写はありませんが、左のコマからの描写からザンボット3特有の戦いにおける二次災害の描写は意識されていた模様です。その後去りゆく香月にブスペアが同行する所もやはり原作準拠かもしれません。
 その後話が一気に人間爆弾編へ突入しますが、連載期間やページ数からの配慮もあり、源五郎父さんが欠席の為かバンドックが東京へ上陸する展開はまるまるカットされています。
  
  漫画版ザンボット3 第4話人間爆弾の恐怖
※サブタイトルはあくまで名無しのイメージです。

前回からの続きで原作の16話をほぼ忠実に漫画化。ちびっこトリオが和行君だけになっていたり、メカブーストが違っていたりする点を除いてほぼ同じ設定。避難民たちの爆発というショッキングな描写も採用しています。そしてラストを飾る左のページの正月を祝うネタは岩田先生オリジナルの描写。本放送時は既に1月を過ぎていましたが、富野監督はザンボット3の時間は3カ月ほどしか経過していないと言われているので、このシーンは案外富野監督の意向を知って岩田先生が付け加えたような気もします。
 
 漫画版ザンボット3 第5話明日への脱出
※サブタイトルはあくまで名無しのイメージです。

原作の18,19,21話を漫画化。香月が勝平を認める過程が省略されていますが、やはり連載期間の関係もあったのではないかと考えるべき。それより一部の書籍で知られたアキとミチのブスペアがまさか(特にミチ)の爆死、兵左ェ門爺さん&梅江婆さんの特攻と原作の山場を岩田先生なりに凝縮して纏めた感じです。あとザンボット3は奮闘しているけれど、次々と送り出されるメカブーストの前に形勢が不利になっていく説明を設けた心配りがちょっといい感じです。
   漫画版ザンボット3 最終回ブッチャーの最期
※サブタイトルはあくまで名無しのイメージです。

原作の22話を漫画化。ただ決戦にはザンボット3だけが向かい、しかも犠牲者ゼロというある意味原作よりハッピーエンドな形で幕を閉じます(左のページを見れば何となくわかってもらえるかと)このラストに賛否両論が巻き起こる予感ですが、名無しとしましては香月なりの勝平への激励が気に入っています。また普通の生活へ戻る3人、特に勝平のラストの描写は富野監督が意識したテーマと全く正反対の結末を迎えていますので、是非買って確かめてみましょう。
 総評
漫画版ザンボット3ですが、原作と比較してさすがに過激な描写は抑えられています。最もちょっと前までに桜多先生のマジンガーシリーズが掲載された雑誌でしたが……。ですがやはり限られたページ数で話を纏め作者の解釈を盛り込むことこそコミカライズの醍醐味。岩田先生なりの新解釈は嫌いでは有りません。コミカライズの醍醐味として独自の解釈を楽しむことが大事でしょう。ただ途中から原稿紛失の関係で絵がつぶれてしまった所が多く、また岩田先生の画風が変わっちゃった事から、ちょっときついと思った所も少々。1話の絵柄で進めていればなぁ……。
 あと岩田先生、ザンボット3を描くことが結構苦手だったのではないでしょうか。合体シーンとかで特に下半身が影一色で塗りつぶされている所とか……。


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c創通、サンライズ、岩田廉太郎

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