無敵超人ザンボット3 全話解説
最終回 燃える宇宙

脚本:五武冬史 絵コンテ:斧谷稔 演出;広川和之


考えさせられる最終回
最終回とは何でしょうか……。ザンボット3を見て思ったことはそれでしょう。勝平は大勢の仲間を失って帰ってきた。これはバッドエンドかと思えばそうでもない。大勢の人々に迎え入れられるシーンは一見ハッピーエンドに見えます。ですがハッピーエンドかと見えれば……難しいものです。これは色々考えさせられる最終回かもしれません。
何故こんなことをいうのかと言えば、大勢の人々に迎えられるシーンですが富野監督が意識して入れたという警察署長に代表されるように、最初に神ファミリーを迫害しておいて迫害しておいて最後に歓迎する為にのこのことやってくる人だって大勢の人々の中にまぎれています。少なくとも共に闘ってきた仲間達は勝平の生還を喜びますが、大勢の人々の中にはガイゾックの言っていたような人々がいる訳です。目を開けた勝平はおそらくそう思ってはいないのですが。
また、ガイゾックの宇宙の静粛を守るとはどういう意味だったのでしょうか……第4話ではビアル星は争いのない惑星と説明されていたので、コンピュータードール第8号がバグを起こしていたのか、またはガイゾック星人が宇宙を司る存在でビアル星人を何らかの理由で都合が悪い存在と思ったのかもしれません。勿論地球人だって。ガイゾックのいう宇宙の静粛はただの独善なのかもしれません。
そしてコンピュータードール第8号と言う名前から分かる通り、残り7機のコンピュータードールがいる訳です。もしまたガイゾックが地球を襲撃した時勝平は周囲の人々から支持を得て戦う事が出来るのでしょうか。また勝平が無理にしても量産型ザンボット3やキング・ビアル(第20話参照)を操縦して戦う防衛隊の兵士は歓迎される存在なのでしょうか……それを考えると色々難しい最終回なのかもしれません……
この手の善悪逆転の最終回では同じ富野監督の海のトリトンが当てはまりますが、その最終回の半分自棄になりながらポセイドンを倒してそのまま去っていく最終回の方が個人的には好きです。ですがザンボット3の最終回はそこにハッピーエンドらしい締めを用意して答えを視聴者にまかせる手法を取ったのかもしれません。


総評〜ザンボット3について〜

まず謝らなければいけないことがあります。ストーリー序盤の解説や突っ込みどころがかなり愛のないものになっていますが、これはザンボット3が名作と評価されることに対し色々疑問や不満を持っていたからなのです。これに関しては以前このサイトで取り上げたメカンダーロボやグロイザーXが想像を反してかなり見ごたえがある作品で、これに対しメジャーな作品が知名度に勝るとも劣らない名作なのだろうかと思ってしまった訳です。ザンボット3は富野監督の作品というだけで名作扱いされているのではないかと思い、マシーンブラスター、ガ・キーンのマイナーロボアニメと抱き合わせで紹介しようと決めました。

 ですが答えは言うまでもありませんでした。ザンボット3は知名度に相応するだけの質が高い作品でした。第1話の突っ込むからわかるように些細な所を欠点としてダメだしするような事がばかばかしくなってしまいいつの間にかザンボット3にのめり込んでしまいました。
 
ザンボット3がどうしてここまで見ごたえがある作品になったのかを考えると、全23話の短いストーリーの間に物語に連続性を持たせたことではないでしょうか。今までのロボットアニメではグロイザーXやボルテスXが連続ドラマを意識していましたがそれはあくまで終盤のみで3クールほどのエピソードの間にはいくつかの単発エピソードがあり、そのエピソードが名作の場合もありますが、このエピソードがなくても特に大した変化はないまぁこんなもんか、及びどうでもいいようなエピソードだってあったことは否めません。ですがザンボット3のエピソードにはスタッフが遊ぶ及び話数稼ぎのエピソードがほとんどない事があり全23話の物語に連続性を持たせることに成功したのではないでしょうか。宇宙太や恵子が主役のエピソードが一本しかありませんでしたが、話数を考えると仕方のないことでしょう。

家族で戦わせる物語もいい印象がありました。特に神家の団結の強さはたびたびエピソードで見られ、勝平のポジティヴな行動と、それを全力でサポートする家族の皆さんも丁寧に描かれていました。それだけに最後の特攻が涙を誘うものになっています。

また、香月真吾という避難民を代表とするキャラクターを配置したのも大きなところで、これまでのロボットアニメでは一般市民の代表はほぼいなかったようなものです。香月が反発し、和解するところは避難民の心情を代弁しているところで、彼も避難民の立場でガイゾックと戦うなど命を賭けて生きた人間の一人です。最終回の彼の言葉にはほろりと来ます。

隠れた名作や佳作は世の中に多く存在し、最近の作品のように知名度だけで中身が伴っていない作品だっていろいろあります。ですが知名度と完成度が共に高い作品だってある訳です。とことんストーリーやドラマを徹底しつつ、ロボットアニメの醍醐味も疎かにしていません。ザンボット3は知名度に比例するかのようにかなり完成度の高い作品でした。

ただザンボット3はこの時代で極限を究めてしまった作品なのかもしれません。実際に機動戦士ガンダムが登場してから戦争と言う形で戦いの正当性を代弁できる作品が増え、正義と悪の境界線が曖昧になっていった作品が主流となります。ですが正義と悪がはっきりとした時代に正義側が人びとに糾弾されたり、大勢の人々を救う事が出来なかったりザと、とことん辛口のロボットアニメで、ストレートにメッセージ性を伝えた作品です。おそらく正義を糾弾する作品はこの後にもあったかと思いますが勧善懲悪の境界があいまいなものになり、いろいろ変化球的な物語の中ではメッセージ性は薄かったと。
そういう意味ではロボットアニメ戦国時代の勝者になったザンボット3ですがこの作品の遺伝子を明白に受け継いだアニメはこの後にもありません。勝者・ザンボット3には冷たい孤独の風が吹いていたのかもしれません。後継者的な作品がない分ザンボット3はロボットアニメ好きには是非視聴してほしい作品かと思います。やはりこのサイトなどを見るよりも実際に見てもらた方が面白いものでしょう。幸いレンタルで出回っている作品なのでスパロボ等で名前を知って興味を持った方などにお勧めしたい作品です
無敵超人ザンボット3 完

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