無敵鋼人ダイターン3 全話解説
第10話 最後のスポットライト


脚本:星山博之 絵コンテ:斧谷稔 演出:貞光紳也 作画監督:山崎和男


映画監督ウォン・ローは世界最強のカンフー軍団を結成して万丈へ挑戦を挑むつもりである。しかし彼はダイターン3を倒すよりも万丈との戦いを撮り史上最高の映画を制作しようと考えているのだ。そんな彼は人気映画スターでもありビューティとレイカもちゃっかりファンである。撮影会の観客として参加したビューティ達が万丈のアシスタントであると気付いたウォン・ローは彼女を出演させようとするが、万丈がそれを阻んだ。彼はウォン・ローがメガノイドである事を知っていたのだ。彼の登場はウォン・ローにとって予期せぬチャンス。正々堂々の決闘が出来るからである。

 万丈のライトセイバーか、ウォン・ローのカンフーか。彼らの戦いの裏でマネージャーが暗躍していた。万丈を倒す事より最高の映画を撮る事に執念を燃やすウォン・ローへ不満を抱いていたのである。ドン・サウザーもまた彼に怒りを抱いているようで、マネージャーへ指揮権を託した。

「万丈、お前はダイターン3を呼べ。これから貴様と俺で世界最高のアクション映画を作ろうじゃないか」
「しかもウォン・ローが死んでいく。となればファンの女の子は泣いて悲しんで大入りは間違いなしだな」
「いやいや、私よりも美男子の君が死んだ方が大入りと思うよ。波乱万丈な運命が遂に破嵐万丈を死に追いやると宣伝してあげよう」
「よく言う……!!」
 カンフー軍団を片付けた万丈は遂にウォン・ローから決闘を申し込まれる。ダイターン3とメカボーグと化したウォン・ローの巨大対決だ。闘技場に撮影用のセットが組まれ、決闘が始まる。ウォン・ローのヌンチャクがダイターン3を苦しめようとした時、突如デスバトルが現れたのだ。操縦するのは先ほどのマネージャー。しかし映画撮影を邪魔されたウォン・ローと、単にメガノイドを憎むダイターンの活躍でデスバトルは粉砕された。
 そして撮影が再開された。オーロラのホログラムを背にダイターン3の最期を飾ろうとウォン・ローは考えているのだ。サーベルがダイターン3の胸を貫いたが、額に迫ったサーベルの刃がサンアタックの光で粉砕された。だが刀を失おうともウォン・ローの執念がダイターン3を圧倒する。角を掴まれてしまいサンアタックを放つ事が出来ないダイターン3。この危機にダイターン3は自分と道連れにするように両機を頭から地面へ叩きつけるのだ。
「私はコマンダーとして貴様と戦うのではない。映画の中で格闘技の極め付けを見せたかったのだ……自分の力でアクションスターの座を手に入れたかった。だがどうだ!私はメガノイドの力を借りてスターになった。わかるか万丈……メガノイドの力でスターになったこの虚しさが。子供の頃からの夢がこんな形で……」
 これで勝負がついたと戦いをやめようとする万丈だが、ウォン・ローは立ちはだかる事をやめない。映画スターとしてエンドマークの入った極めつけのアクション映画を残していかなければならないのだ。例え筋書きが変わってもだ。
 朝焼けを背に両者の蹴りが炸裂する。ウォン・ローが落ちていく際、ダイターンのサンアタックが彼を捕え、ダイターンクラッシュが風穴を開けた。メガノイドである彼を憎む訳ではなかった。映画スターとして最後の花道を飾らせたかったのだ。
 この戦いは映画として公開され大ヒットを記録した。ダイターン3対ウォン・ロー。彼にとって最期の作品として……。


映画撮影の夢に全力を賭ける悪役
 前回に続いてお気に入りのエピソードです。とにかくふか〜い回です。単なる悪役を作らない事はともかく、人間味をとことん突き詰めたコマンダーの姿が前回でも描かれていましたが、今回のウォン・ローはそれ以上。メガボーグと化しても人類征服はどうでもよく映画撮影に全てを賭ける彼の姿。死者を続出させても、ダイターン3を倒すのも全て史上最高のアクション映画を撮る為。他のソルジャーは全員映画好きの撮影チーム。バトルの中で映画撮影にこだわる脇役の撮影用語が飛び交うシーンも独特な雰囲気が生まれています。撮影する事もあり、バトルアクションもいつも以上にキレ味があった気もします。
 互いを倒す事で共通していながらも、映画を完成させる為のウォン・ローとメガノイドを片付ける為の万丈の相違した考えの元でぶつかり合う会話もなんとなく繋がりがあったのではないかと感じちゃいます。またメガノイドになった事で初めて万能の力に頼って夢をかなえることのむなしさを知って独白し、それでも映画監督として最高の映画を残さなくてはならない自分なりのルールを抱くウォン・ローは曽我部さんの名演もありロボットアニメ史において独特な雰囲気の敵キャラに君臨しているはずです。
 また富野監督はこの回に映画監督になれない悲哀を込めたとコメントしていますが、多分ウォン・ローの事なんだろうなぁと……アニメではやっちゃだめな事とコメントしていますが、ウォン・ローの言動に重みが感じられるのはその悲哀が込められているからではないかと思います。


今回の突っ込み

今回は特にありません。


次回予告(ナレーション全話・鈴置洋孝)

突然僕たちに助けを求めてきたヘスラーとは何者か。巨大な戦車が甦る。メガノイドの新たな作戦が開始される。だが、肝心なときにダイタンクはダイターンに変形できなかった!
次回無敵鋼人ダイターン3「伝説の二―ベルゲン」にカムヒア!

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