ゲッターロボG 全話解説
第14話 友達は風になった

脚本:上原正三 演出・作画監督:落合正宗


 夏のある日。元気は海に行きたいが同伴してくれる人がいない為和子から行かせてもらえない。しかし早乙女家付近にいつの間かプールが出来上がっている。そのプールは文次達が開いたインスタントプールであり、リョウ達は早速泳ぎに出かける。
 グラー博士の愛弟子である地虫鬼はつるべ落とし作戦を提案。作戦を感づかれないように地虫鬼は早乙女研究所に潜伏する。人間に鬼である事を知らされたら処刑されてしまう。グラー博士の言葉を信じて彼は文次のプールへやってくるが、彼は百鬼衆故に地球の文化を知らず、泳ぐ事も出来ず溺れてしまった所をゲッターチームに助けられ、早乙女家に出迎えられる。地球の文化を知らない地虫鬼に対して、元気は親切に接してくれる事から人間に対する考えを改めようとしていた。
 その頃早乙女研究所に自身が発生し続ける事から、その発生源を探るためゲッターチームが出撃した結果、地底にメカ地虫鬼が穴を掘り続ける姿があった。彼をどかせようとするゲッターライガーだが装甲には歯が立たず、ゲッターポセイドンで地上へ引きずり出そうとしたが、メカ地虫鬼に捕らわれてしまい毒ガスを送り込まれてしまう。換気口を封じて立ち向かうゲッターチームだがそれでも時間に限界がある。
 これこそつるべ落とし作戦だった。地虫鬼は百鬼衆のひとりとしての姿に戻るが、彼は葛藤していた――もし正体を晒してしまえば自分は人間に殺されてしまう運命だから。しかし彼は地虫鬼としてメカ地虫鬼へゲッターロボを解放するよう命じた。鬼でありながら人類を助ける道を取った地虫鬼へ帰る道はあるのだろうか。元気からはここにいてくれと頼まれるが、自分は兵士として帰らなければいけない。元気から別れの餞別に風鈴と自分のペンダントを好感し、自分を友達として接してくれる元気を前に流れる涙を後ろ姿で堪え一人走りだした……。元気はミチル達に彼について聞かれた時彼はこう答えた。風になって走りだしたのだと……。
 地虫鬼は牢獄に送られてしまい、メカ地虫鬼はヒドラーの手により動かされた。地虫鬼の装甲が強固である為ゲッタードラゴンの攻撃が通用しない。この状況に突如元気が貰った地虫鬼のペンダントが光り出し、カードリッジが飛び出た。そのカードリッジは地虫鬼の力によって射出され、カードリッジ内の設計図にはメカ地虫鬼の設計図が仕込まれていた。その設計図により頭部中央に指令回路が存在する事が明らかになり、ゲッタードラゴンはスピンカッターで頭部を粉砕し辛くも勝利を収めた。この勝利は元気と友達になった地虫鬼のお陰であった。リョウ達は彼に礼を言いたいと述べ、元気は何時かまた会える事を信じていた。

「今度、今度生まれ変わってくる時は人間に生まれ変わりたい……そしたら、そしたら元気君に会える……」
しかし、地虫鬼はヒドラーの手により銃殺刑にされた事をリョウ達や元気は知らない。ただ死の直前においても地虫鬼は安らかな表情を浮かべていた……。


夏のある日の物語。元気、鬼と初めて出会う

 百人衆の名ゲストキャラが登場する3部作その1.地虫鬼は胡蝶鬼や鉄甲鬼と違いスーパーロボット大戦シリーズで登場の機会がない為マイナーですが、該当回に匹敵(失礼ながら胡蝶鬼回より面白かった)する出来の高い名編に仕上がっています。
 ゲッターロボGでは百鬼衆が人間にほぼ近い外見をしている事から、より敵と味方のドラマが進歩している事は以前もあげましたが、個人的には元気の立場が良くなった事もGならではの長所です。正直無印では思った以上に元気の立場が薄かった気がしますが、Gになればリョウ達が早乙女家に居候している設定が基本となり、家族での食事ネタがある事からクローズアップされる時に元気も度々登場し、ベンケイと仲がいい点は無印のムサシと同じですが、ムサシの場合ジョーホー、浅太郎、文次と競合者が登場し活躍の機会がなくなってしまう事が良くありました。Gではこの3人が中盤でフェードアウトしまい、元気がムードメーカーの座を不動の物にしました。ジョーホーはムサシがいなくなった点から降板も止むを得ず、文次、浅太郎は正直いらないキャラと「ゲッターロボ大全」に記載された事に名無しは同意しています。なのでそこまで気にはなりませんでした。
 今回はそんな元気にクローズアップされた回で、百鬼帝国にも子供の鬼がいる事を説明し、子供同士の友情がゲッターロボの危機を2度も救うも、地虫鬼は百鬼帝国の兵士として帰る道を選んでしまう悲しい末路が用意されていました。グラー博士が寛容な処置を求める事から敵でありながらそれなりの人格者である点をクローズアップし、それにヒドラーが独断で彼を銃殺する描写を上手く対比させている所からヒドラーを上手く扱っています。さすが上原正三さんのセンス。最後地虫鬼の安らかな笑顔と彼の死を知らない元気やリョウ達で締めるどこか悲しげな終わり方も良し。
 作画の落合正宗さんは、以前リョウの顔を描くのが苦手でどちらかと言えばイマイチな部類に入る作画監督さんですが、あどけない子供を描く点ではなかなか上手な人ではないかと思います。元気と地虫鬼の子供同士の絡みは素朴な味があり、3部作の他の回(小松原さん、野田さん)とは違う“これはこれで良い”との気分にさせる絵です。
 珍しい点ではリョウが文次がミチルにはプールの入場料の50円をサービスする所からずるい!と指摘する点。初めて見せたリョウのギャグ描写かもしれません。


今回の突っ込み

今回は特にありません。


次回予告(ナレーション:キートン山田)

超人的な身のこなしで華麗なる変身をする金髪の美女・胡蝶鬼。その美女が操るメカ胡蝶鬼は無数の毒蛾と必殺ブーメランでゲッターロボを襲いかかる。美しくも悲しい運命の戦い!
次回ゲッターロボG「赤い蝶のバラード」にテレビ・スイッチ・オン!

BACKBACKNEXT

inserted by FC2 system