無敵超人ザンボット3 全話解説
第5話 海が怒りに染まる時

脚本:五武冬史 絵コンテ・演出:貞光伸也


 連絡船で避難キャンプへ向かう避難民のもとに、救難物資を届けるザンボ・エースだが非難民にとっては招かれざる客だった。香月は神ファミリーのせいでガイゾックが侵略してきたと主張し、勝平の意見の聞く耳を持たない。神ファミリーのせいで戦火が広がったと主張する香月に避難民は同調し、ブスペアまでも言葉が出ない。腹が立った勝平は冗談とはいえザンボ・エースで彼を殴りかかろうとした。本人は冗談のつもりだが、彼の軽率な行動が周囲の人々の反感を買うことを知らずに。
 神ファミリーは懸命に救難物資を分け与えていると、メカブースト・ガルンゲ襲来の知らせが入った。ブッチャーはガルンゲで数々の都市を破壊している。神ファミリーはそれぞれの持ち場に就いて駿河湾へパトロールに出動。受け取り拒否された救難物資の食料を貪る勝平も連絡を聞いてすぐさま他の2機と共に出撃。だが勝平は避難民との件で気が立っていたこともあって戦いでうっぷんを晴らすつもりだった。連絡船の香月をかすめるようにザンバードが飛ぶが、香月の怒りと不満はますます溜まるばかりだったことを勝平は知らなかった。
 ガルンゲを発見しザンバードの攻撃が始まる。だがザンブルとザンベースが積極的に攻撃している姿が勝平には気に食わない。ザンボ・エースに変形して敵にのっかかりぼこぼこに殴るが、突撃形態に変形したガルンゲに3機は勝てそうにない。一太郎のコンビネーション命令が下るが、勝平は合体する気がない。二人の歎願でしぶしぶ勝平はザンバードら3機をザンボット3へ合体させるが、ガルンゲの強固なボディにはザンボットカッターが通用しない。ガルンゲに圧倒されるまま苦しむザンボット3。だが一太郎がガルンゲのデータを分析完了。ザンボットカッターが通用しないガルンゲだが、変形する際に羽が収納され、その際にあらわになる内部を突けば勝てるのだ。
 一太郎の命令でザンボット3は一旦撤退。後ろから追うガルンゲの吐いた火の玉をザンボット3は回避。だが、かわした火の玉が 連絡船の向う補給港・海津に直撃してしまったことを彼らは知らない。敵を引き付けてバスターミサイルを放ち、ザンボットグラップをガルンゲの羽に突き刺すザンボット3。優勢に転じたザンボット3だが、真下で連絡船があったことを彼らは気づいていただろうか。そしてザンボットカッターがガルンゲの羽を切り落とすのだが、切り落とされた羽が連絡船の真上に落ちた。爆発する連絡船、その中で香月は妹・かおると離れ離れになってしまい、2機が入水した際に発生した津波で両親とも離れ離れになってしまった。そのまま流される香月ら避難民。だがザンボット3とガルンゲの戦いはまだ続いていた。そして機体内部をザンボットカッターが突き、ムーンアタックがガルンゲを打ち砕いた。
 だがこれでよかったのだろうか。勝利の代償に補給港と連絡船が壊滅し、大勢の避難民が戦いに巻き込まれたのだ。この戦いで人々の神ファミリーに対する憎しみは確固たるものになった。そのことを知らず避難民の中から香月を探す勝平は、ミチと出会う。だが彼女は言った。

「私たちを助けるならさっさと地球から出て行ってよ」と。

そして、家族を失った香月の怒りの矛先はキング・ビアルへ向けられた。


結論・神ファミリーの睡眠教育に疑いあり
 今回のエピソード。もはや有名すぎる回でしょう。戦いが起これば被害が起こる。迫害される主人公たち。正義のための戦いが信じてもらえない現実。それらの要素を従来の戦いの中で描いた画期的なエピソード……なのですが、この世界で神ファミリーの行動を考えると一つの答えが見つかりました。
睡眠教育が不十分だった?それです。
まず、分析して敵の弱点がわかった。そこまではいいとしましょう。ですが勝平は何故補給港のいるところへ避難したのでしょうか?あくまでもパイロットが素人なら、周囲の状況を把握できないため仕方ないでしょう。ですが三人は睡眠教育をなされたパイロット。それを前提としましょう。仮に補給港が補給船で、パニックに陥った補給船が逃げる軌道が突然すぎて判断できなかった場合も仕方がないかもしれません。(似たような例で第13話の林の中に避難民が隠れていて見えなかったとかのシチュエーションなら仕方がないと受け取れます)
ところが、補給港は動かないもの。睡眠教育をされたパイロットが補給港が近くにあることを頭の中に入れていないはずがないでしょう。もちろん連絡船上空で戦う事も睡眠教育されたパイロットがやるようなこととは思えないです。兵佐ェ門が嫌われた……と言いますが当たり前です。こんな戦いをされたら普通でもそういうでしょう。

ええと、さらに言えば勝平のザンボ・エースに乗って避難民へ無法な行動を行っているところに突っ込みを入れるべきです。香月に冗談で殴りかかろうとするだけで人々の怒りが募るだけ。何故このことが分からなかったのでしょうか。勝平が調子に乗っていたからと、まだ何も知らなかったからといった理由が思い浮かびますが、だったら睡眠教育で被害を最小限に食い止める戦いを叩きこませるべきだったのではないかと。いくらなんでも人権的にやりすぎかもしれませんが第20話で、睡眠教育で意識の奥まで戦う人間として教育されており、戦いでの恐怖を感じないように教育されている時点で、人権?そんなもん知ったことかと言っているようなものです。

 要は生兵法は大怪我のもと。お約束を破らない方が楽しめる場合もあり、このエピソードはその好例ではないかと。このエピソードが万全に受け入れられていたら後番組のダイターン3でもそういう作風があったとも思えますし、他のロボットアニメでもそういう作風があったでしょう。(この作風が戦争というリアルロボット的なテーマに発展したという見方もありますが)やるとしても第1話から思いっきりやれば違和感がなかったと思います。
かなり評価の高いエピソードですが、自分としては色々な矛盾点に首をかしげたエピソードです。お約束を守ることの大切さを実感したエピソードでした。(ただ金田作画は迫力満点です。一人ひとり描き分けた群衆や、ザンボット対ガルンゲのアクションは思いっきり動かしています。)


今回の突っ込み

もう上で語りました。


次回予告

ようやく勝平の父・源五郎が南の海から帰ってくる。だがメカブーストの攻撃で怒り狂った人々の手に捕らえられてしまった。父を助けるかメカブーストを倒すか。次回ザンボット3「父が帰ってきた日」さぁどう戦いぬくかな……

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