無敵鋼人ダイターン3 全話解説
最終回 万丈、暁に消ゆ

脚本:荒木芳久 絵コンテ:斧谷稔 演出:小鹿英吉 作画監督:塩山紀生


僕は……嫌だ!!この答えは果たして……?
 
前回の次回予告からフォーマットが違う為只者ではない最終回と感じていましたが、ある意味ザンボット3以上に考えさせられる最終回でした。ザンボット3の最終回ならまだ答えがどちらか程度で済む範囲の最終回ですが、僕は……嫌だ!!の台詞にはどのようなメッセージが含まれていたのか、そして最終回の万丈邸の灯りの謎など。富野監督らが未だに応えを明かさないので(笑)本当に視聴者へゆだねられる謎です。
 名無しとしては万丈がメガノイドである事は否定する見解ですね。創造やドン・ザウサーの会話でもメガノイドであると指摘されませんでしたし、第33話の秘境のアンチエレクトリカルパワーに万丈が反応しない所からもどうもメガノイドとは。仲間の面々が去ったのもひょっとしたら万丈が戦っていた最中の出来事で、皆が去った直後の万丈が帰って来ただけとか……実際冒険王の漫画版ではギャリソンが帰ろうとした所で万丈の人影に気付く内容でしたので、多分そうあってほしいなぁと考えています。
 そのほかの点では今までのどことなくユルい雰囲気が今回は完全に切り捨てられ、最終回の宇宙戦は何処となく後番組のガンダムを彷彿させる描写です。コロスとドン・ザウサーの意外な関係は、今まで無表情だったコロスがドン・ザウサーへ弱みを晒す所で一変し、彼へ盲目な愛を抱くメガノイドとして認識する事が出来ました。あとドン・ザウサーは万丈の父・創造ではないかとの説もあり、名無しはコロスは万丈の母じゃないかと感じています。サウザーは創造に名前が何処となく似ていますし。コロスは第36話での回想にて万丈の母と同じ声優さんなのでもしや……と思ってみたり。万丈へのメガノイドの素晴らしさを語る所は、まるで子に語るような姿でした。
 作画面ではメインキャラクターデザインの塩山紀生さんがとうとう作画監督に登板。塩山さんは放送当時ライバル作「闘将ダイモス」に参加されていた為ダイターン3にはほぼノータッチだったりします。何故ダイモスに入ったのかは分かりませんが、どちらにしろダイモスで見られた荒く太いタッチはダイターン3でも見られ、特に雷を受けてモノカラーの色彩で描かれた鉛筆の細かいタッチの万丈とダイターン3は最終回のならではのサプライズとも考えられます。作画面のサプライズに加えて、メガノイド全滅後の衝撃の展開もあり、視聴者へ謎を問いかける最終回の完成系ともいえましょう。
 僕は……嫌だ!!を始めとする最終回の考察。これも名無しの見当による一つの例に過ぎません。実際に視聴して答えを皆さんが考える事が大事でしょう。


総評〜最後まで何でもありのロボットアニメ〜

 思えばダイターン3、勧善懲悪カラーがザンボット3より強く、そこで原点回帰したと言われますが、いえいえ、何でもありでした。本当の話。金持ちで女性に優しいキザな伊達男が主人公と言う点自体がロボットアニメ史において類を見ない存在でして、両手に美女を持つ点も、有能な執事や豪邸に住む点も当時の視聴者からすれば斬新過ぎる存在ではないかと思っています。
 彼らの活躍による第1話は破嵐万丈の魅力が詰め込まれたただのロボットアニメではないと視聴者にアピールするに相応しい所。ですが、それ以降でダイターン3の何でもありを支えた要素は人間臭いコマンダーの面々の数々ではないかと思います、
 初期はまだ大人しく、どちらかといえば万丈一行の魅力で視聴者を見せてきた感じですが、第9話「おかしな追跡者」で登場したメガノイドの風紀委員長フランケンからコマンダーの個性がどっと増えて、単に悪役に見なせないキャラや本当にどうしようもないお馬鹿さんだったり、地球制覇などとは無関係の夢の為にメガノイドへ魂を撃った人間も多く、特に良心的(?)なゲストコマンダーでもロボットアニメの法則基づいて最後は死ぬ不可避のテンプレを見事に回避した回も多く、後半は殆どコマンダーが個性豊かな性格となりお馬鹿系エピソードが続出しましたが、それはそれで全然楽しませる秀逸なものでした。
 そんな特に後半のお馬鹿エピソードで笑う事も大事ですが、シリアスな要素もしっかりと用意され、特に万丈はメガノイドの恐ろしさを知っている事もあり人間の素晴らしさを信じている言動が多く見られました。メガノイドは所詮機械に過ぎない彼の相手へ容赦ないスタンスによる言動が、例えお馬鹿な事をやっても本編をしっかり締めるスパイスの役割を果たし、最終回へ一気に爆発したのだなと考えています。
 スタッフの面では脚本家さんの健筆ぶりに目が行きました。特にシリアス系、及び本筋に関わるエピソードを書かれ文芸面におけるダイターン3の大黒柱として活躍した荒木芳久さん、シリアスからギャグ、人間讃歌などあらゆるタイプのシナリオを書き、特にお馬鹿系エピソードで傑作を残した故・星山博之さん、そしてライターデビューで途中参加でありながら、型に捕らわれない発想でパターン破りのエピソードに挑んだ松崎健一さんは機動戦士ガンダムのメインライターとして活躍されていますが、その経緯にダイターン3で見せた質の高いストーリーが決めてになったのではないでしょうか。また富野監督のコンテ回では氏のメッセージが伝わる描写も見られ、富野監督も後年にこの作品をかなり評価されているように、かなり楽しんで作品に挑んでいたと言えます。
 要はダイターン3はザンボット3同様スーパーロボットアニメの面白さを保ちながらパターン破りに挑んだプレ・ガンダムとして輝き続ける傑作として是非見ておかなければならないでしょう。皆さんも興味を持ったら視聴して、最終回について色々考えてみてはいかがかと。

無敵鋼人ダイターン3 完

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