絢爛舞踏祭〜ザ・マーズ・デイブレイク〜 全話解説
最終回 火星の夜明け!マーズ・デイブレイク

脚本:浅川美也 絵コンテ:森邦宏、村木靖 演出:森邦宏 作画監督:小平佳幸


反撃、宝の正体、そして旅立ち!

 さて、最終回ですが綺麗に終わらせる事は出来ましたが、やはり少々うやむやになってしまった謎が気になります。グラムは果たして火星移民の末裔だったのか、王の証に何故希望号は引き寄せられて復活したのか。あとローレンとナイアル・ポーを懲らしめるシーンがありますが、彼はちゃっかり戦艦内に神の石を積み込んだまま撤退していますので、完全に凝らしめたかどうかは難しい所です。ナイアル・ポーは後日談で相変わらず何時もの様子ですので……。まぁ神の石を取り上げた以外は特にお咎め話だったのでしょうか。
 個人的には最後にグラムは船を手に入れたようですが念願の都市船ではなかったのはちょっと残念かと。まぁ、火星を旅していく際に働きながら都市船を買うかもしれません。


総評〜21世紀のザブングル、富野なき富野作品の匂い〜

 マーズ・デイブレイクで私が思った事としましては、21世紀の戦闘メカザブングル、そして富野不在の富野作品ではないかと思います。肩の力を抜いて楽しむ事ができる点が共通する事は勿論、他にはチーフライターの浅川美也さんと監督の森邦宏さんが「ブレンパワード」「∀ガンダム」「オーバーマンキングゲイナー」など、つまり白富野三部作と呼ばれる富野作品にへ脚本および絵コンテ・演出として参加されていた事です。またキャラクターデザイナーの故・逢坂浩司さんは「機動戦士Vガンダム」で富野作品とのかかわりがあり、アニメーション制作のボンズはいうまでもなくサンライズから独立した会社ですので、富野監督のフォロワーとサンライズのOB会社が生み出した作品なのかもしれません。
 全体とすればそれ相応に楽しむ事が出来ましたが、ザブングルと比較するとどうも劣ってしまう部分もありました。その劣ってしまった点とは何かと言いますと、アニメとしての動きで敗れてしまったのだと思います。
 作画としては全体において丁寧です。故・逢坂さんの温かみのあるキャラクターデザインも好きなのですが、その丁寧で暖かい作画とデザインが本編の内容と合わせると、マーズ・デイブレイクは気楽に見れるけどこじんまりとした作品になってしまい、ザブングルの場合、気楽に見れる上に型破りな精神が爆発した様な作品でした。ザブングルの様に主人公が美形ではなく、キャラクターやメカがギャグ漫画のようでもいいので暴れ回る作風でしたらアニメとしての楽しみも上がったのではないでしょうか。
 アニメとしての動きにおいて作風からすれば綺麗過ぎた作品でしたが、マーズ・デイブレイクの個性として近年では稀な子供に分かりやすいリアルロボットアニメという点をあげようかと思います。規制がきつくなり始めたテレビ東京系の夕方で方法された事も大きいかと思います。マーズ・デイブレイクはザブングルとは違い脇役が一人も死ぬことがない伸び伸びとした世界観の上に、ストーリーも主人公が海賊の一味となって悪党を懲らしめて、幼馴染がいる海軍から逃げ切りながら宝探しに挑むシンプルなストーリー。キャラクターについてもしっかりとした個性がありました。お気楽で気の良い兄貴ともいえる主人公グラム、ツンデレ幼馴染ベス、肝っ玉母さんのリーダー・エリザベス、クールでありながら三枚目役も熱血漢もこなすヤガミ、そして猫やイルカなど人を越えた登場人物もちゃっかりクルーの一員として溶け込み、彼らの自己主張が強いから誰が誰だか分かりやすく、アイアン・ギアーのクルー同様、夜明けの船の面々も誰が誰だか最後まで見たらちゃんと分かるようになりました。
 残念ながら原作のゲームが約1年後の発売となり、そのゲームの評価もあまりよろしくない事からマーズ・デイブレイクの知名度はパッとしません。ですが21世紀のザブングルとして、夕方からロボットアニメが消えようとしていた時代に子供でも分かりやすいリアルロボットアニメを送りだした事は評価すべき点ではないでしょうか。ちなみにあるアニメ雑誌でのボンズ特集において、マーズ・デイブレイクは誰でも楽しめるB級作品を目指していたようです。作品を見た物からすればこの目指していた物になった事は事実だと思います。

絢爛舞踏祭〜ザ・マーズ・デイブレイク〜 完

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