超電磁マシーンボルテスX
全話解説
第34話 憎しみの炎が危機を呼ぶ

脚本:田口章一 絵コンテ・演出:山崎和夫 作画監督:坂本三郎、金山明博(総作画監督)


三崎町がボアザン兵に襲われ、子供、老人を除いた町の人々が拉致、殺害される事件が勃発。三崎町に両親を残す中村隊員、安達看護士はショックを受け、特に中村隊員は地底城を捜す為に、泥酔状態で格納庫のジェットを奪おうとしていたのだ。取り押さえる仲間達の元にボルテスチームが佐近寺博士の伝言を伝える。酒を飲んで、騒ぎを起こす者はビッグファルコンから去れとの内容だ。この命令を受けた中村だが、泥酔状態の彼は反発するどころか、剛三兄弟がボアザン星人の血が流れていると隊員にばらしてしまったのだ。中村隊員が持つボアザン星人への怒りが血を引く健一へ向けられる。だが彼の暴挙を一平が止める。ボアザン星人であるだけで健一を敵と見なす中村へ退去を命じる一平、自分の血による複雑な状況に心を痛める日吉、大次郎。さらに中村を庇う同じ身の安達は中村への処遇が厳しすぎると指摘、引かない一平に対してボルテスチームは心の痛みを分からない集団と呼んで2人は大挙してしまった。
 この事件はボルテスチームとビッグファルコンの隊員の間に亀裂を生んだ。健一だけではないボルテスチームへのビッグファルコンの面々は不信の態度を取っているのだ。このやりきれない状況に葛藤する健一達だが、めぐみは人の悲しみを知ることが大事ではないかと告げて健一の考えが変わりだした。

 一方ハイネルは突撃攻撃部隊をビッグファルコンへ殴りこませる作戦を計画。更にベルガンがビッグファルコンの状況を伝えたことで突撃攻撃部隊の進撃は決定した。一方三崎市から拉致された人々が洗脳されて奴隷として働かされる中、反乱する一組の夫婦がいた。彼らは中村隊員の母親であり、事情を知ったベルガンは2人を殺して、棺をビッグファルコンの滑走路へ送り込む。これにより中村隊員を始めとする隊員たちの怒りを刺激させてボルテスチームとの関係をより悪化させる作戦は着々と進行していたのだ。
 中村隊員は佐近寺博士に頼んでも退去命令を取り消されなかった。ボルテスチームが撤回を求めるが、佐近寺博士は戦いに間違いは済まされない、自分に負ける者は平和のために戦い、勝つ事が出来るか、弱虫が戦う権利も資格もない、同情する意味もない。これが佐近寺博士の考えだった。
 佐近寺博士に健一へ回答を求める。健一はボルテスXは多くの戦う仲間によって支えられており、中村隊員もその一人である。中村隊員の両親を想う心を持つゆえに抱えた辛さと苦しみがあの時爆発して、自分は安達から人の心の痛みが分かる人間になる事が大事だと気付かされたのだ。人の心の悲しみが分かるようになり、共に最後まで戦いたい。健一の信念に佐近寺博士は成長の証を感じ退去命令を撤回した。
 だがベルガンの作戦が進み、中村隊員の棺が中村達の前で明かされた。中村は泣き叫び、安達は怒りに震える。更に突撃攻撃部隊が迫り、中村を始めとする隊員の怒りが一斉に爆発した。逃げていく突撃隊員を中村らが追いかける。あと一人で全滅。その時健一はボアザン兵士の前に立ちはだかり攻撃を中止するように伝える。親の敵を討つ事の何処が悪いと対立する中村らだが、健一は安達に人の心の悲しみを教えた貴方が憎しみだけで動いてほしくない対論して、中村へ銃を向ける。さらに一平は親の敵を討つ事が当たり前だと考える中村を甘ったれるなと喝を入れる。健一ら剛三兄弟とめぐみはボアザンに親を殺されている。しかし、それでも自分勝手に動く事は許されない。平和の為に戦う者が感情だけで動いてはいけないのだと諭した。
 しかしその時、最後の攻撃兵士が死ぬ間際に中村へビームを放った。虫の息の中村は健一へ先程の失言を詫び、健一が許したのを見て安心するように息を引き取った。だが鎧獣士アリンガが襲来。怒りと使命に燃える健一はボルテスXでアリンガを圧倒。Vの字切りが斜めに、アリンガを切り捨てた。そして健一は中村の冥福を祈り、安達の非を許したのだ。そして花輪が海へと投げ出された。


ライバルはザンボット3だった!?
この回は当時傑作選のビデオに収録されたエピソードですが、正直第27話、第28話、第37話辺りを出し抜いて選ばれるエピソードかどうか疑問な所もあります。
前回で決戦を感じさせる展開となった為、今回と次回はどちらかといえば話数を稼ぐ為の繋ぎ回。今まで全く描写されなかったビッグファルコンの隊員の一人に焦点を当てるエピソードは少々不自然な気がして、また死に際で突然改心してしまった中村隊員、また中村隊員の死で和解という今一つ理由がはっきりしないかおりとの関係も今一つ物足りないものが。
 最も酷いエピソードの様に叩いていますが、佐近寺博士が再び健一達の壁となって成長を促す点は見もので、ビッグファルコンの中で孤立するボルテスチームの描写はボアザン星人であることを知らされた故のエピソードかもしれません。

特にサブタイトルから分かる通り、同じ味方、人類から白い目で見られる剛三兄弟は同期に放送された「無敵超人ザンボット3」に類似点を感じる所もあります。実際ボルテスXの終盤は宇宙での決戦とザンボット3と共通する点があり、また五武冬史、田口章一両氏はボルテスX、ザンボット3の両方に関わっており、今回のエピソードを担当した田口章一さんはザンボット3で定番であった迫害される主人公の描写(第12話)を担当しています。あとボルテスXもザンボットも同じサンライズの作品だったりします。

 多分同期のザンボット3に刺激されてこの様なエピソードを作ろうと田口章一さんが考えたので生まれたのが味方から孤立するこのエピソード。終盤の宇宙での戦いはほぼ同じ時期なのでどちらが先かわかりませんが、基地が戦艦として運用される点はザンボット3の方が先です。


今回の突っ込み

両親を殺された気持がわかるかと叫ぶ中村隊員ですが、ボルテスチームは何気に身内がボアザンに殺されている人ばかりです……。一平も両親が病死、自爆、裏設定の浜口博士もボアザンに殺されています。


次回予告(担当ナレーション;市川治)

ベルガン将軍が捕らえたボアザン星からの脱走者とは何者か?合体を阻止されたボルテスXが狙う捨て身の救出作戦とは!?父と子の再会が悲しい死を招く……
次回ボルテスX「星の戦士への鎮魂曲」にご期待ください!!

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