ゲッターロボG 全話解説
第8話 夜空に輝く二つ星

脚本:高久進 演出:山口康男 作画監督:小松原一男


 白骨鬼が操るメカ白骨鬼が出現し、ゲッターチームが出撃する。七夕の事もありベンケイはさっさと片付けてミチルの料理を食べたいとゲッターポセイドンへ合体して立ち向かうが、メカ白骨鬼は想像以上に強敵であり、百鬼帝国側ではまだ年端もいかない少年少女達に彼女の戦い方を見せる事で戦士としての教育を施していたのだ。
 だが白骨鬼の娘リサは争いを嫌う平和主義者であった。その為彼女は組織を抜け出してしまい、刺客に追われる中で崖から転落してしまう。この事を知った白骨鬼はリサの助命を嘆願するが、ブライ大帝は情けで規律を乱す事は許されないと告げ、母である彼女にリサを始末させる事がせめてもの情けだと言い放つ。
 一方リサは偶然七夕の買い物に出かけていたミチルに転落する所を目撃され、早乙女家で保護されていた。それを知ったリョウ達は百鬼一族のスパイかもしれないと疑い、早く手を打つようにと早乙女博士に告げ口する。この両者の対立にリサは何も言わなかった。何故なら崖から落ちた際に彼女は頭を強く打ったせいで角と共に記憶を失ってしまっていたのだ。
 一方白骨鬼は川で遊んでいた元気を人質にしてリサを明け渡す事を早乙女研究所に要求する。百鬼一族の汚いやり方でリサへ怒りをぶつけてしまうベンケイ。そして早乙女博士は元気を助けるためにリサを明け渡す決断を下すが、白骨鬼に指名された為護衛についたミチルは罠にかかって弟ともども捕らわれてしまう。
 記憶を失ったリサに対し白骨鬼は彼女の角と記憶をミチル達が葬り去ったのかと思いこむが、リサはミチルは命の恩人であると彼女を必死に説得する。だがその時、別の刺客達が自分諸共リサを始末しようとしている事を白骨鬼は気付いた。彼女は娘の頼みを飲んでミチルと元気を逃がし、リサを遠くへ逃がす事を選ぶ。

「リサ!しっかりお逃げ……どこまでも、どこまでも逃げておくれ。捕まるんじゃないよ。幸せになるんだよ。百鬼一族のいない土地に住んでね。母さん、いつまでもお前の幸せ祈っているからね……」

 リサの無事を祈り、ミチルと元気に対しても敵でありながら自分の娘を救った命の恩人として逃がす。お互いとも逃げて親を安心させてほしいと思い込む。しかし、白骨鬼の願いは虚しかった。リサの逃げた所で刺客達が待ち構えており彼女は死の間際に記憶を取り戻すが、白骨鬼はその場に居合わせたリョウ達が彼女を殺したと思い込んで、メカ白骨鬼で出撃。刺客を殺してゲッターロボも亡き者にしようとする覚悟は娘の仇を討って自分も散る覚悟でいたからだ。
 ゲッタードラゴンとメカ白骨鬼の争いの中でコマンドマシンが割って入り、ミチルは説得しようとするが自分が相手になると白骨鬼は言い出す。止むを得ず放ったコマンドミサイルをメカ白骨鬼は避けるつもりはなかった。
「あの親子の魂は、今初めて一緒になれたのよ。七夕の夜に……」
 彼女は殺し合いを止めて自ら娘のいる天に昇る事を選んだのだ。リョウ達は白骨鬼とリサ親子の冥福を七夕の夜空に輝く二つ星へ祈った……。


戦火に引き裂かれた母と子の悲劇

 ゲッターロボGでは百鬼衆が人間に近いデザインの為か人間ドラマがより前面に押し出された作品ではないでしょうか。今回はゲッターのテーマともいえる反戦を人間ドラマに上手く絡めた名編でして、ロボットアニメではあまり見ない敵側の母と子に焦点を当てた描写が秀逸。
 白骨鬼は野沢雅子さんの名演も相まってゲッターを苦しめる強敵としてだけではなく、争いを嫌うリサを母親として思う姿もしっかり描写され、彼女を争いのない場所へ送り出すシーンの台詞は母親が娘を想う気持ちそのもの。殺し合いを止めて、ミチルの攻撃を受けて敢えて散る事を選んだ白骨鬼の想いはラストシーンの二つ星と共に七夕の意味を絡めて、良い締めを飾っています。小松原さんの作画も何時も以上にのどかさが増している点から母と子のドラマを映像面で盛りたてています。戦争のせいで散ってしまった敵側の母子を描いたエピソードとして名無しがお勧めする傑作回です。
 またさりげない点では百鬼帝国の少年少女達は士官学校のような所で兵士としての教育を受けているシーンが妙に印象に残ります。リサの殺害に軍国主義教育を受けた子供達が関わっている事を考えると思わずぞっとしてしまいます。リサの回想シーンなどで戦いとはほど遠い幸せな親子の描写が挿入されていただけに、そのような子供達が大人たちによって戦士として思想を塗りつぶされてしまう教育、リサを殺した子供達も、ある意味他には百鬼帝国の大人たちの犠牲者かもしれません。他では百鬼帝国の角を目にしてリサを警戒するリョウ達の描写は、「超電磁マシーンボルテスX」で描かれた角の有無による差別の先駆けともいえましょう。


今回の突っ込み

百鬼帝国にも七夕という日本の文化が存在しているのでしょうか。七夕だから今日は大目に見てやると言い残しゲッターポセイドンを生かして去っていく白骨鬼……むぅ。


次回予告(ナレーション:キートン山田)

凄まじい嵐をついて出撃したゲッターロボは百鬼帝国の妨害電波の為に変えるべく方向を見失ってしまう。やっとの思いで辿りついた研究所には百鬼帝国の仕掛けた恐るべき罠が待ち受けていた!
次回ゲッターロボG「SOS!ゲッターロボ応答せよ」にテレビ・スイッチ・オン!

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